飲んで飲まれて男談義「おごられ酒」 NOname! 古俵大輔

飲んで飲まれて男談義「おごられ酒」 NOname! 古俵大輔

大人になると、いろいろな経験を重ねているもの。RUDO界隈にいる人々なら、その濃度は一般人以上に高いのだ。そんな男に一杯…ではなく、いっぱい奢ってもらいながら話を聞くという担当役得企画が「おごられ酒」だ! 今回のお相手は神戸で人気のセレクトショップ・ノーネームと、ファッションブランド「DRESS HIPPY(ドレスヒッピー)」&「AT-DIRTY(アットダーティ)」を手がける古俵大輔。彼の行きつけである2軒をハシゴしながら神戸男に話を聞いた。

まだまだひよっこがやっている仕事かもしれませんが、ブーツを一般化したいんですよね。

 

 

ーーブランドとショップを神戸で10年近く続けてきて、「勝った!」と思う瞬間ってありますか?

 

古俵 まったくないです。いろんなところに行ったり、いろんな人に会ったりすると、まだまだ自分はこんなレベルなのかと思わされますし。やっぱり、もっともっと他のブランドと肩を並べられるようになりたい。スタッフも増えてきたし、彼らの地位を上げていきたい。みんな頑張ってるし、僕らのブランドが評価されていけば、彼らのことを見る目も上がっていくじゃないですか。実は僕は、そろそろ東京にお店を出そうと思ってるんです。色々反対もあるし、景気が悪いなんて言うけど、東京に店があるっていうのは本当に強いと思う。売り上げも大事なんですが、それ以上に東京にいるブランドと肩を並べられるようになりたい。もちろん神戸は拠点にし続けますが、東京の次はいずれはアメリカで成功したいですね。

 

ーーすごくいいと思います、その意見は。でも、これは手応えあったと思う瞬間くらいはあったんじゃないですか?

 

古俵 それで言えば、靴を作った時ですね。「テイクファイブマイル」というブーツブランドを昨年作ったんです。履けば履くほどいいんですよ。もちろん服は全部格好いいと思って作るけど、あんまりヘビーに着ないものも出てくるんです。でも、今の「テイクファイブマイル」の靴は、本当に履きやすくて履いています。

 

***ここで2軒目の「チャーリーブラウン」にに移動***

 

 

 

2軒目のチャーリーブラウンの前……ではなく、実は看板下の路地を入っていくのだ。

 

こちらの路地がチャーリーブラウンへの道。露地というか、ビルの隙間だ。

 

これがお店の前。真っ暗過ぎて写真がぶれてしまいました……。

 

 

ーー「テイクファイブマイル」の話題にぴったりのお店ですね。

 

古俵 狭い路地の先にあるから目立たないんですが、音楽もお酒もいいんですよ。お店(ノーネームリバティストア)にも近いので、たまに飲みに来ています。

 

ーー『テイクファイブ』ってジャズの名曲だし、それに合いそうな雰囲気です。「テイクファイブマイル」はまだ発売前ですが、反響はどうですか?

 

古俵 正直、発売前からむちゃくちゃ評判がいいんです。

 

ーーなんでブーツをやろうと思ったんですか?

 

古俵 「ドレスヒッピー」と「アットダーティ」をやっていますが、「ノーネーム」というお店を意識したものづくりをしているんです。それで、こういうブーツがあったら嬉しいなと思ったんです。「ドレスヒッピー」と「アットダーティ」を扱っているのが「ノーネーム」という位置づけなのですが、そのセレクトショップ目線で扱いたいと思えるブーツを作ろうと思って。だから、ショップありきのブランドです。

 

ーースニーカーでも良かったと思うんですが、なんで革靴なんでしょう?

 

古俵 やっぱり、なんだかんだ革靴の方が格好良くないですか? スニーカーも作ってるんですが、ブーツの方が奥が深いというか、面白い。勝手な意見ですけどね。確かに今はスニーカーの方が人気があると思うけど、好きなものじゃないと続かない。やっぱり自分たちが欲しいものを作ろうと。

 

ーーブーツ系には有名なブランドがいっぱいあります。それとは異なるのはどんなところですか?

 

古俵 ブーツって作るのにお金がかかるし、初めの生産分ですべて予算を使ったんです。まぁ、博打ですよね。そんなこと、他のブランドではあまりやらないと思います。でも僕なりに石橋を叩いて渡るというか、僕は立派な橋やと思って、コンクリの頑丈のものと思って渡ってるんですよ。実は三年くらい前に他のブランドに頼んで作ってもらったんですが、やっぱりイメージと違ってて。なんかしっくりこなかったんですよね。

 

ーー伝統的な革靴って他との違いを出すのがスニーカーとは難しいと思う。その意味で違うところはありますか?

 

古俵 名前の通りなんですが、クラシックなこととかを僕らなりに守り続けていること。それって時代が変わっていないとも見えるし、時代を守っているとも見える。『テイクファイブ』の原曲は、すごく良いもの。ただ、奏でるアーティストによって全然違うものになる。ノーネームのためのブランドということを考えると、トラディショナルなことをしたかったんですが、その方向性はブランド名を付けたことでより加速したんです。やることが明確になったというか。言葉にすると、いろいろまとまることがありますよね。それと同じで、ブランド名を付けたことで、ブレずにいられるようになった。クラシックな原曲だって、それぞれの味付けでカバーしたことで原曲を超えるものだってあるんです。それこそが、「テイクファイブマイル」でやりたいことなんです。

 

ーー今は何型あるんですか?

 

古俵 6型です。一足のミニマムロット数を考えると、すごい予算がかかっている。だからあまりブーツブランドって新しく生まれづらい。ビジネス的にも。だから、僕が馬鹿だからやってるんですよ(笑)。先輩方からしたら、まだまだひよっこがやっている仕事かもしれませんが、ブーツを一般化したいんですよね。

 

ーー新しい型も出したりするんですか?

 

古俵 出しますよ。ただ、新しい型を作っても、定番にはしません。今の6型も続けるかどうか考え中。ただ、もっともっとブーツに興味が出るきっかけを作りたいから、ブーツの周辺というか、履いた時に格好良く見える靴下とかも作りたいです。

 

ーーかなり壮大な企みがあるんですね。

 

古俵 毎日子供を幼稚園に送る時に、雨が降ったらグランドがびしゃびしゃになっているんです。だから履いていく靴を考えないといけないから、レインブーツを買おうと思ったんです。どちらかと言えば女性的な感覚なのかもしれませんが、僕は雨が降ってるなら明るい色とかを履きたい。でも日本で売ってる男性用のレインブーツって黒やグレーばっかり。レディースは色がいっぱいあるのに。それがなんとか変わってほしいと思っていて。だからこそ、ブーツに挑戦したというのがあります。まだまだブーツがスニーカーほどファッショナブルなものとされていない。だから、真っ赤なモデルとかも作りたいですね。ヴィンセント・ギャロが履いているものみたいな。まっピンクのブーツがあっても、いいじゃないですか。それがまかり通るようにしたいですね。むしろ、日本はブーツの文化がそれほどないからこそ、まだまだフラットだと思うんです。素直な気持ちで見られるのが魅力というか。

 

ーーそんな思いが込められてるからこそ、反響が大きいんでしょうね。

 

古俵 仲間内のブランドとも話しましたが、今は自分たちの時代なんですよ。例えば、10歳上の先輩に気を使ってばかりじゃダメ。それをしていたら、僕らの時代は終わってしまう。だから、ニュースタンダードを作りたいというのが強いんです。『テイクファイブ』は原曲は素晴らしい。でも、世界中の人がカバーしているものも格好いい。ラテンでもサルサでもあるし、誰がその曲を作ったとか関係なかったりもする。「レッドウイング」「オールデン」「ウエスコ」「ホワイツブーツ」とかが原曲だとすると、僕らはそれを解釈して新しいカバーをする。本当のトラディショナルをもっと格好良く見せるにはどうするか、というアレンジをやっているんです。今の時代のものを作りたい。ただ、原曲があったからこそ僕らも新しいことができるので、先にあげたブランドとは、ブーツメイカーとしては同じでも職種は別だと思っています。

 

 

 

 

チャーリーブラウン店内。ムーディーな空間は落ち着いて話すのに最適。

 

古俵さんが履いているのが、昨年スタートした「テイクファイブマイル」。伝統をノーネームらしく表現した話題のブーツだ。