グッドウェアを賑わすピンズ代わりの新たな一手 伊達系刺繍作家・洋輔が手がける〈刺繍ブローチ〉の世界
2022年のRUDO春夏号では、自身が手芸を始めるきっかけや生い立ちなどを語ってくれた手芸アーティスト・洋輔。手芸アイテムの新時代を切り開くブランド〈KATSUNO(カツノ)〉での活動の中で、新たに刺繍を一歩更新した、刺繍ブローチ作りにハマっているということで、今回は緊急取材を敢行。刺繍ブローチをデザインする際のこだわりや今後の展望など、幅広く語ってもらった。
どこにでも付けて楽しめるのが「刺繍ブローチ」の良さかな。
――洋輔さんは、母親(タレント・キャシー中島)の影響から幼少期から刺繍に親しみ、26歳の時に刺繍を学びにフランスへと留学し、帰国後に手芸技術を活かした仕事をスタートさせています。刺繍、そして最近注力をされているという「刺繍ブローチ」の魅力はどこにあると思いますか?
洋輔 母がハワイアンキルトをしていることもあり、僕はまず刺繍に惹きつけられましたが、一概に刺繍といっても、例えば糸でもコットンやシルク、サテン、ポリエステルと素材の種類が多いですし、ビーズやスパンコールもある。使う糸の色や素材によって印象が変わるところが魅力ですね。当初は自分で刺繍したものを家の壁に飾るなどして家族内で楽しんでいたのですが、作品を外に持っていくとみんなが褒めてくれて、それがモチベーションになっていきました。それで服に縫い付けたりしていたのですが、服自体に縫ってしまうと当然付け替えができない。そこで、ブローチにするのが良いんじゃないかと、考えたんです。付け替えもできますしね。服やバッグ、ストールなど、どこにでも付けて楽しめるのが「刺繍ブローチ」の良さかな。
――以前作られていたキルトバッグは、葉脈や枯山水をモチーフとしていましたが、「刺繍ブローチ」のアイデアも、そういったものが多いのでしょうか?
洋輔 葉脈や枯山水だけを意識して物作りをしていたわけではありませんが、確実に影響は受けていて、自分の中では“自然”をテーマにしているところはあります。昔から何かを考えるときは、まず自然の中にあるものに意識を向けることが多くて。例えば、色合わせも自分が見た景色の記憶から、印象深かったものを組み合わせています。モチーフに関しては、ハワイアンキルトをしている母が植物をモチーフにして長年作品作りをしているので、自分はあえて動物を選ぶことが多いです。親とは一緒のことをしたくないっていうちょっとした抵抗みたいな(笑)。あとは、刺繍教室に来てくださる生徒さんや色々な方のお話を聞いて、リクエストがあったものを自分なりに考えて作品にすることも多いです。最近では、インスタグラムでリクエストをいただいて甲冑を作ったり、あとヘリコプターやお相撲さんなども「刺繍ブローチ」にしました。みんながどんなものを欲しがっているのか、すごく興味があるんですよね。
――今日着てもらったヴィンテージの革ジャンやデニムなどに、ピンズ代わりにつけても格好いいですよね。ブローチもそうですが、刺繍糸にもこだわられていて、オリジナルの糸を作られているとか。
洋輔 そうなんです。訪れた場所の色から受けたインスピレーションを刺繍糸に落とし込み、「ロンドンのバス停」や「バルセロナの闘牛場」、「ハノイの教会」といった名前をつけて、製糸会社とコラボさせていただきました。全12色を作ったのですが、色がグラデーションになっているので、刺し進めていくと色が徐々に変わっていくのがいいんです。5年前に作ったのですが、なぜか最近すごく売れているんです(笑)。
フルオーダーの場合は、モチーフにしたいものの写真を見て、相談しながら完成させていく。
――洋輔さんに刺繍ブローチをオーダーする場合はどうしたらいいですか?
洋輔 最近はインスタグラムで新しいデザインを発表すると、そこから直接オーダーをいただくことが増えたので、今後はオーダーシステムを構築し、まずは今まで作ったもの(アーカイブ)を欲しいといってくださった方にちゃんと届くようにしたいと思っています。過去のアーカイブですでにデザインが決まっているセミオーダーと、アーカイブが存在しない、ゼロからデザインを一緒に考えていくフルオーダーの2つがあります。フルオーダーの場合は、モチーフにしたいものの写真を送っていただきつつ、相談しながら完成させていくというイメージです。デザインにもよりますが、オーダーから完成まで1〜2カ月を予定しています。
――今後、刺繍や刺繍ブローチで表現したいことはどんなことですか?
洋輔 手刺繍をやっている人の多くは、刺繍をブローチかアクセサリーに仕立てるのですが、アクセサリーにしてしまうと、どうしても女性的なイメージが強くなるので、男っぽく遊べる武骨な刺繍ブローチを作っていきたいと思っています。そして、もっとオリジナリティと言いますか、自分ならではの色を出すために、大好きな尖ったデザインやアイロニックな刺繍ができたらいいなとも思っています。あと、僕は人前で喋る仕事などもさせてもらっていますが、無意識のうちにどこか気を遣って話している部分があるんです。そんな時、どうしても言いたくても言えなかった部分を、すべて刺繍制作をすることで吐き出せたら面白いかなって(笑)。さっきまですごく楽しく喋っていたかと思ったら、家に帰って首が飛んでいる刺繍をしている……みたいな(笑)。どこまで許されるかわからないですし、どこかで叩かれるかもしれませんが、とにかく固定観念や周囲の声に惑わされることなく、自分が思うがままに自由に創作していきたいと思っています。それで共感してくれる人が一人もでいてくれたら、これほど嬉しいことはありません。
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●PROFILE 洋輔
1983年10月19日、静岡県出身。手芸家、タレント。幼少期から刺繍に親しみつつ、高校時代に俳優としてデビュー。フランス留学後に手芸技術を活かしたキャリアをスタート。手芸アイテムを発表するブランド〈カツノ〉を展開。ここで紹介した刺繍ブローチなど、ファッション性に長けたアイテムも多数制作している。両親は俳優・勝野洋、タ レント・キャシー中島。NHK Eテレ『すてき にハンドメイド』に出演中。
Instagram:@yosukekatsuno_officiel
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CONTACT
カツノ ショップ
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Instagram:@katsuno_japan
photo:TSUTUOM YABUUCHI(TAKIBI)
interview:KEI OHSAWA