Feature

渡辺俊美×誰かと誰かのレコードジャケット S/PEAK

4th.guest / 若旦那

新年度の幕開けとともに、俳優としての幕開け(しかも主演!)をも迎えることが決まった渡辺俊美が、ゲストの心に刻まれたレコードジャケットを肴に音楽〜男の話を展開する対談企画第4弾。今回のお相手はRUDOでも馴染み深い男・若旦那。これまで語られたことのない湘南乃風黎明期の葛藤など、思いの丈をぶちまけた。

PHOTO:RIEI NAKAGAWARA
撮影協力:cafe pizzeria violetto 東京都渋谷区代々木5-63-10 TEL.03-5738-3295

今月のレコードジャケット
WHAM!『MAKE IT BIG』

大ヒットシングル『Last Christmas』などで知られるワム!が1984年にリリースしたセカンドアルバム。ジョージ・マイケルのソングライティングの才能が爆発して米英で1位を記録。シングルカットされた『FREEDOM』、『CARELESS WHISPER』ほか2曲も世界中のトップチャートを席巻した。

若旦那「俺達はポップスを進化させて、次の世代にバトンを渡そうと。それが湘南乃風の始まりでしたね。」

若旦那「俺達はポップスを進化させて、次の世代にバトンを渡そうと。それが湘南乃風の始まりでしたね。」

  • T 音楽って先輩の影響とかもあると思うんだけど、そこから脱却する時ってあるじゃない? キッカケを作ってくれた人のセンスが自分と違うということに気づいて、“俺は俺で見つけよう”って違うものを聴き出すみたいな。
  • W (自分で音楽を選んだのは)ロカビリーやフィフティーズ、オールディーズを聴き始めてからですね。そこからハードコアとかヒップホップとか聴いて、トランスとか4つ打ち系いって、それを経てゼロになってからレゲエにいくっていう(笑)。
  • T レゲエにいくのが面白いね(笑)。
  • W そこで自分の本質に火がついたんです。今まで喧嘩とかでしか燃焼できなかった自分のパワーが、音楽によって合法的に燃焼できるんだっていうのに感動したんです。
  • T ある意味で“リアルジャパニーズ”だよね、それは。牛若丸が一番最初にジャパニーズレゲエで漢字使ったと思うんだけど、湘南乃風はさらに意識してやり始めたと思う。レゲエを取り入れるだけじゃなくて、自分達のアイデンティティというか“日本人とは?”みたいな部分があるというか。
  • W ジャマイカのゲットーに住んで修行したんですけど、ある時ジャマイカ人に「何でお前はレゲエやってるの?」って言われたんです。「レゲエはジャマイカの伝統音楽だから、ジャマイカ人がやるものがレゲエであって、他の国のヤツらがやるのは俺達にとってはただのポップスなんだ」って。そこでハッとして、すぐ帰国しました。それで、もうレゲエぶるのはやめて、日本のポップスに自分達が感じたレゲエサウンドをアレンジして取り入れようと話し合ったんです。俺達はポップスを進化させて、次の世代にバトンを渡そうと。それが湘南乃風の始まりでしたね。
  • T それは凄く良いね。俺たち(TOKYO NO.1 SOUL SET)はもともとドラゴン&ビッケが進展して始まったんだけど、元々ダンスホールレゲエっぽい感じだったのね。だけど俺はレゲエDJではないから合間のパーティーでは、レゲエだけじゃなくてヒップホップとかオールジャンルでかけてたから(色々な要素が)混ざった。“ビッケがラップだったら、おれはデニス・ブラウン”っていうかさ。トラックもレゲエじゃなくて色々な要素をサンプリングして、ヒップホップ寄りにはしないで、あえて日本語でやる。だから、“歌は歌謡曲、スタイルはレゲエ、方法はヒップホップ”とミックスさせたのがTOKYO NO. 1 SOUL SET。それが自分でやってて超楽しかったの。ある意味、日本だけじゃなくて世界レベル。“こういうのやってないでしょ”って。湘南乃風もそういう意識の中でやってたんでしょ?
  • W 子どもたちがそれぞれの学校で遊び方が違うように、俺達だったら日本の歌謡曲をちょっとレゲエっぽくしちゃうよって感じでやり始めたんです。だから、レゲエを背負った人達からはメチャクチャ叩かれました。「お前達はポップスだ!」って。でも、逆に僕はそれがわからないんですよ。「え、だってポップスやってるんですもん」って。“レゲエじゃないですよ、だって日本人ですから”って意識が入っちゃってるから。
  • T なるほどね。それを聞いて思ったんだけど、そもそもレゲエってラブ&ピースじゃん。だからそこでの争いごととかは変だよね。好き嫌いは誰にでもあるじゃない。だからそこにレゲエを持ち出してどうのこうのって、客観的に見て違うと思う。
  • W だから、嫌いだったら嫌いで(批判する人と)交わらなければいいだけで、もう音楽で勝負しようと思ったんですよ。音楽っていっても何が勝負かわからないけど、セールスの枚数といったわかりやすい勝ち負けはあるから。ちゃんとそこで勝負しようと思って。どれだけ俺達ポップスでいけるかっていうのを追求したんですよね。
  • T 何年か前にタモリさんのやってる生放送の歌番組を見て、“この時代の中で誰よりも湘南乃風がパンクスだ”と思ったんだよね。久々に心にドーンときたの。昔はキュンキュンするのってあまり無かったんだけど、湘南乃風を見た時は素直に「凄いな」って思ったよ。直接的ではなくて例えて物事を言っているというか、物語にしてある。小沢(健二)君もそうなんだけど、そういう方法を取った湘南乃風のストレートな曲をテレビで観て、一番が終わった後に考えさせられたよね。“ヤワなロックバンドよりロックだな”って。当時のマネージャーと「やばいね!」って話をしたのを覚えてるよ。
  • W 嬉しいです。僕らはタイアップも一切付かずに上がっていったんですよ。『睡蓮花』とか『純恋歌』の頃って一番売れていた時代なんですけど、タイアップも付かずにあそこまでいったので「そこをちゃんと見てよ」というのはあります。大人のお金の力ではなくて、一個一個上がってきたから今があるわけで。それってレゲエの本質じゃないかとも思うんです。現場主義というか。そういうところを(周囲は)見てくれてなかったから悔しかったですけどね。でもある意味、それで諦めがついたというか、こんな所に居てもしょうがないって思ったんです。もっと広い世界に出なきゃなと。当時周りのレゲエの人達は僕らのことを「チャラいのが出やがって」って言ってたけど、それこそアンダーグラウンドや裏で色々やってる人達は逆にチャラチャラやってた。だから、(自分たちと比べて)どっちが本気なのかなって思ったんです。
  • T レゲエもヒップホップも、入り口は斜めから入ってるよね。でも、入り口が斜めでも俺は良いと思うよ。いざやった時に、ちゃんと出来るか出来ないかの問題だから。
  • W 今まで当時のことをこんな風に話したこと無かったですけど、そこの悔しさが自分の原動力になっているかなって思います。
  • T 「俺は俺で」とやってる中でのモチベーションはちゃんと保ちたいなっていうのは凄くある。同い年でキングカズ(三浦知良)さんがいるんだけど、カズさんはワールドカップには行ってないじゃん。あれだけ活躍していても、先駆者でレジェンドって言われていても。でもずっと自分のモチベーションは保っている。それって、よっぽどの精神力とサッカー愛だと思うんだよね。そういうところって本当に尊敬できる。だからミュージシャンも、色々な見せ方があると思うんだよ。
  • W あの頃を経て、今はまったく違いますね。今度は逆に、数字じゃない。媚びなくなりましたね。お客さんにも媚びない、プロモーターにも媚びない、レコード会社にも媚びない。エンターテイメントから離れて、今はアートとして音楽を捉えるようになりました。自分から湧き出てくるものが、一番大切だなって思っていて。
  • T (2017年発表/the WAKADANNA BAND名義でライブ収録した『POST』は)良いアルバムでした。
  • W ありがとうございます。
  • T RCサクセションの『RHAPSODY』ってライブ盤に近いよね。
  • W あれは、かなり意識しました(笑)。
  • T ハッハッハ、そうなんだ(笑)。
  • W あんな風には出来なかったですけど。
  • T でも雰囲気は出てたよ。
  • W エネルギーだけ伝えたくて。実際には後悔だらけなんですよ。大きいホールでやればどうにかなるけど、(録音会場がライブハウスの)チェルシーホテルだから色んな音が入りまくっちゃって。ハプニングもあったし。でも、そういうのが良いんですよね。
  • T 今やりたいエネルギーを感じてもらえるアルバムだと思う。
  • W やっぱり70~80年代の音楽が本当に僕は好きだから。その時代と今とでは何が違うって言ったら、エネルギーが詰まっているかいないか。綺麗で上手い平べったい音楽が最近の音楽だと思うんです。良い機材で修正もできるようになっているから、どうしてもそうなっちゃう。だけど、それをやっていたらキリがないなって思って。だから潔くライブ盤で出そうって判断になって。当時の機材を使ってやっても、修正してたら結局一緒だなと思ったんです。下手クソでも良いやっていう度胸。クラッシュとか聴いててもやっぱり下手ですもんね。
  • T 下手だよ。でも下手なりにやっているのが格好良いんだよね。ポール・シムノンなんてベース弾けなかったんだから。でも(クラッシュに)入りたくてベースやって、一番レゲエが好きだったからああいうのが出来たんだよ。
  • W クラッシュを改めてもう一回聴くと、僕も全部好きでしたね。

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PROFILE

渡辺俊美(TOKYO No.1 SOUL SET、ZOOT16、猪苗代湖ズ)
TOSHIMI WATANABE
1966年12月6日・福島県出身

1990年に「TOKYO No.1 SOUL SET」を結成。福島県出身ミュージシャンなどと結成した「猪苗代湖ズ」でも活躍。メンズブランド「WHATEVER WORKS」のディレクションも務める。自身のソロプロジェクト「ZOOT16」の公式サイトではオリジナルTシャツなどのグッズを不定期で発表。即完なのでこまめにチェック。
watanabetoshimi.com
www.zoot16.com


今月の客人

若旦那 WKADANNA
1976年4月6日・東京都出身

2001年にジャパニーズレゲエグループ・湘南乃風を結成。2011年からはソロ活動を活発化させ、これまでに5枚のアルバムをリリース。昨年からは“the WAKADANNA BAND”としてパンクやアコースティックなど、バンドスタイルでの新たな音楽性を披露。今月まで放送されたTBS系ドラマ『下剋上受験』などに出演するなど俳優としても活躍中。the WAKADANNA BAND『POST』が絶賛発売中。
waka-d.jp

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