飲んで飲まれて男談義「おごられ酒」 legend 吉原 直

飲んで飲まれて男談義「おごられ酒」 legend 吉原 直

強さ、優しさ、ファッションなどなど、男の格好良さを測るパラメーターは数知れず。でも、“形には現れない格好良い”を追求している男もいるはずだ…と思っていたら、見つけました。それが、アクセサリーブランド「legend(レジェンド)」代表、吉原直です。“スキンヘッド&作務衣姿”というパッと見は強面の職人である彼のご自宅にお邪魔し、焼肉と酒をゴチになりつつ酔いどれ深夜放談!

元和食屋だったご自宅で男だらけの焼肉パーティー

 

ーーこちらのご自宅は、元和食屋だったんですよね。

 

吉原 そうです。家を探していた時に良い物件を見つけたと思いました。一階が工房、三階が家族の住居スペースです。

 

ーー二階(取材場所)は元宴会場っぽいですよね。

 

吉原

そうです、何帖あるんだろう。今は子供の遊び道具とか置いてありますが、お客さんや友達が来た時は宴会スペースに早変わりします。あとで見て欲しいんですが、廊下にシャワーボックス設置したんですよ。だからいつでも泊まりに来てもらって大丈夫です。

 

ーーここ、東京からちょっと離れてる(在来線で2時間程度)んで、ありがたいです。今日は泊まるつもりで来てるんで、あとで使わせてもらいます。

 

吉原 タオルもあるんで、使っちゃってください。

 

ーーあと、今日は焼肉だと聞いていたので、お腹を空かせてきました。

 

吉原 近くに牧場があるんで、そこでA5クラスの肉を仕入れてきました。豚肉とかも。あとやっぱり自分は安っちい肉も大好きなんで、スーパーの精肉コーナーに並んでたものも用意しました。あとで娘も来るのでソーセージとかもどうぞ。

 

ーー僕はどうしてもB級の食べ物が好きなので助かります。もちろん良い肉も好きですけど、昔から安物で育ってきてるんで、そればっかりだと疲れちゃうんですよ(笑)。

 

吉原 ビールもいっぱいあるし、飽きたら焼酎やウィスキーがあるんで、冷蔵庫から出しちゃってください。

 

ーーありがとうございます、遠慮なくいただきます!

 

 

 

自宅二階で焼肉スタート。直さんの前にあるのは、なんと自作のファン。

 

Aクラスの牛肉はなんといってもサシが命。とはいえ酔っ払うと全部うまい。

 

じゅうじゅうと音をあげるお肉ちゃん。至福の光景だ!

 

みんな大好きなウィンナー。昔懐かしい駄菓子感は欠かせない。

 

 

 

 

「凄いやつが手にする凄いものを作る人が、一番凄い」って思ったんです

 

ーー直さんがアクセサリー作りを志すようになったきっかけって、なんですか?

 

吉原 父方の祖父が物作りが好きだったんですよ。日曜大工どころか小屋を建てちゃうくらいで、「じいちゃん、すげー」って思いながら見てたし、僕も幼稚園の頃からノコギリ持って木工をやったりするうちに、自然と何かを作るのが好きになっていました。あと、子どもの頃って世の中があまりわかってないから、物を作る人は凄いけど、金持ちってやつも何だか凄いという思い込みがあったんです。それで小学校5年生くらいの時なんですが、近所にトンテンカントンテンカンって中から聞こえる店があって、何やってるのかなと思って半開きのシャッターを覗き込んだら、中に貴金属とか革を使って物を作ってるおじさんがいたんですよ。そこで、全部が結びついたんです。「物を作る=凄いこと」、「金持ち=理由がわからないけど凄いやつ」、さらに「高い貴金属は金持ちの凄いやつが買う凄いもの」。そんな点と点が一つに結びついて、シャッターを覗いた時に「凄いやつが手にする凄いものを作る人が、一番凄い」って思ったんです。だから、仮面ライダーとかウルトラマンよりも、目の前にいるおじさんがヒーローになったんです。その後色々あっておじさん…というかそこの代表なんですが、長く付き合うことになって、たまたまその人が乗ってたからハーレーダビッドソンにも憧れるようになりました。

 

ーー覗いたところは何かの工房だったんですか?

 

吉原 今でもあるんですが、アクセサリーショップだったんです。だから不良が集うところだったし、まぁ酷いところを覗いちゃったと思いますよ(笑)。でも、まだ子どもだから全然怖くなかったし、母ちゃんの方が怖かった。だから「何やってるの?」って平気で声かけたんです。向こうからしたら、「お前が何やってんだ!」って感じですよね。でも、それで店の中に入るようになったんですが、目の前にはシルバーとか金とか何だかわからないけど貴金属が並んでるわけです。凄いと思いましたね。そこから家で似たようなもの集めて、見よう見まねでアクセサリーを作るようになっていきました。最初は革だったんで、小学校6年生の時にメディスンバッグを作ったりして。

 

ーー革はどうやって手に入れてたんですか?

 

吉原 問屋に仕入れに行ってました。タウンページで調べて。あと万引きしたり(笑)。中学校に入ったら技術家庭の時間があって、木工室でもやりたい放題でしたね。工具は手に入れることができなかったんで、中学校のマスターキーをパクって、忍び込んで工具を引っ張り出して色々作ったりもしてたんです。

 

ーー物作りというか、アクセへの芽生えが早かったんですね。

 

吉原 クソ早かったですよ。小5くらいで革とか銀を触ってるんですもん。銀の素材とか細かい違いもわかるようになってましたから。

 

 

 

 

焼肉を焼く今宵のホスト、吉原直。インタビューに答えながら肉の焼き加減を見る一人二役。

 

酒とタバコは男の必需品。酒、酒、タバコ、酒、タバコと唇が休む暇なし!

 

直さんとRUDO編集部・大副の対談風景。真剣な面持ちですが、ほぼオフレコのことばかり。

 

夜も深まって行くと、ポン酢とねぎのタレのさっぱり感がやっぱりチョベリグ。

 

 

 

笑って死ぬことが僕の目標になった

 

ーーアクセショップ出入りして学校忍び込んで万引きして、不良っぽい感じですね(笑)。

 

吉原 不良ではなかったと思いますよ。不良の定義って何ですか?

 

ーー他にはゲーセン行くとか、カツアゲするとか…。

 

吉原 ゲーセンも行ったし、カツアゲもしましたね(笑)。

 

ーーじゃあ不良ですよ(笑)。

 

吉原 僕の実家ってサザエさんの家みたいなんです。三世帯いて。母親なんて8人兄弟の末っ子なんで、ばあちゃんは明治の人。だから、凄く(考えが)硬いんですよ。あとから母親から聞いた話なんですが、僕がシルバー屋をやりたいと言った時は、当時露天で似たようなのを売ってるイラン人がいっぱいいたから、「あ、うちの子はイラン人になりたいんだな」と思ったみたいです。母ちゃん、ショックで家出しましたよ(笑)。

 

ーーきちんとした家柄なんですね(笑)。アクセサリー以外に部活とかはやってなかったんですか?

 

吉原 部活もやってましたよ。吹奏楽部。チューバやってて。小4から高3までやったし、個人で県一位にもなってますよ。転校生だったから誘われてそのまま入っちゃっただけなんですけどね。僕は、一度彫金を封印していたことがあったんです。音楽やろうと。シルバー作ってると楽しいから(音楽への)気持ちがブレちゃうなと思って。親もシルバーだと認めないけど、吹奏楽やってるとちゃんとしてそうだから安心するんです。だけど僕は、演奏するのは凄く好きだったけど、楽譜の勉強も嫌だし、クラシック音楽もまったく聴かなかったんです。音楽をやってる人全員を否定はしないけど、たまたま僕の先生は「クラシック音楽以外は全部雑音」と言うような人で、先輩とかもそんな感じの人が多かった。ピアノのレッスンに行っても、タバコの臭いしているの俺くらいなんですよ。

 

ーーまぁ、一応子供ですしね(笑)。

 

吉原 そこは、“お紅茶”が出てくるようなところなんです。紅茶じゃないですよ、“お紅茶”です。「オホホホホ」って笑うような。だから僕にとってはつまらなくて。しかも、僕が中2の時にその先生から「音楽の演奏家になるのはやめとけ」って言われたんです。「そんな甘いもんじゃない」と。ただ、「それでも吉原君が(音楽家という苦しい道を選んでも)笑って死ねるのなら目指せばいい」って言われたんです。その時、笑って死ぬことが僕の目標になったんです。僕の周りにいた音楽やってる連中はかたっくるしいやつばかり。でも、彫金の方はバカそうだけどみんな笑ってたんですよね。だからそっちがいいなと思ったんです。

 

 

 

直さんの愛娘・響(おと)ちゃん。おじさんたちにひるむことなく絡んでくれた。遅くまで起こしてゴメンネ♪

 

愛娘を前にすると強面の直さんもにんまり。

 

レジェンドのアクセサリー。ネイティブジュエリーらしい繊細な輝きは、いつの時代も男たちの鉄板装飾品だ。